2019/01/31 20:46
クラフトビールの会社を立ち上げ、すでに7年半。イギリスで会社立ち上げの構想を練っていた時間も含めると13年。 クラフトビール好きなら誰もが知るであろう、『東京を奏でるビール”Far Yeast”』や、『和の馨るエール”KAGUA”』と日本を代表するクラフトビールをプロデュースしている山田司朗さんは自社ビールを世界に広めようと奮闘している。 「Asia Beer Cup 金賞」、「International Beer Cup 金賞」や「Hong Kong International Beer Award 大賞」など、輝かしい実績を兼ね備えた日本発のクラフトビールの始まりはイギリスへのMBA留学がきっかけであった。 「もともと留学はしたかったです。大学院留学をしたいなとは漠然と抱いていて、英会話学校とかにも通っていました。」 「ただ、周りに英語に精通している人がいないと、大学生の英語の勉強って続かないじゃないですか。笑 したいなとは思いつつ、ふつうに就職して普段はそのことを意識しないで仕事をしてましたね。」 もともと中学の頃から洋楽を聞いたりしているうちに、海外へのあこがれが強くなり、いつか海外で活躍してみたいという気持ちが強くなっていった。 「僕自身ファーストキャリアがVCなのですが、仕事をしていく中で、金融機関やコンサル業界だと、MBAを持っている人が多かったんです。大学時代はMBAではなく、大学院へ行くなら違う大学院へ進もうと考えていたんですけど、社会人の経験が活きてくる環境がMBAだと知って。MBAなら今からでも行けると思い、ぼちぼち動き始めたのがきっかけです。」 外へ外へ、広い世界へ向かって行こうという思考がもともとあったという山田さん。就職した先に見えたMBAにもともとあった海外への強い思いを重ね、イギリスでのMBA留学を踏み切った。 イギリスで感じた日本との大きなギャップ イギリスでのMBAを開始し、いくつも日本とのギャップを感じる日々。その中でも特に、ケンブリッジで著名なジャック・ラングさんの『スタートアップの三原則』を聞いたときの衝撃は大きかった。 「”Global(グローバル)”, “Sustainable(持続可能性)”, ”Underserved Undead Needs(潜在的欲求)”」 「”Underserved Undead Needs”っていうのはニッチということですよね。顕在化していないけど満たせれていない。需要があるから、それに対して何かを提供するのがスタートアップのやるべきことです。」 その中でも山田さんが惹かれたのは”Global”の視点。日本の当時の業界にはほとんどなかった視点だという。 世界的にみて、相対的に日本の経済力が大きくなることはない。今までは国内の市場がものすごく大きかったので、別にGlobalに目を向けなくても十分な活動ができた。 すでに、日本だけの市場に目を向けていては長い目でみて事業を存続できない。 やるならビール!という考えはなかった ビールの事業をはじめようと、日本にいた時に思ったことは一度もなかった。 「日本では工業製品のビールしか知らなかったので。まぁ好きでしたけど、愛着があってビジネスにしようとは思わなかったですね。」 「ヨーロッパは様々なビール文化発祥の地があるので、ドイツ、ミュンヘン、チェコ、ベルギーとかそういうところに観光で行くことがあって、必然的にビール博物館に行ったりパブで地ビールを飲んだりだとか、結構あるんですよ。」 ヨーロッパでの観光を機に「意外とアリなんじゃないか」と思い始めた。 「『お前はミュンヘンに行ったことがあるのか!』と。すぐ行ってこいと言われて、その何週間後にドイツに行ったんですけど、やっぱりすごかったんですよ。」 そんなビールにプライドを持つヨーロッパの人にも少なからず影響は受けていた。 「イギリスに帰ったらナイジェルに謝りましたよ。やっぱりドイツは最高だって笑」 和のビールを世界に広めたい 「日本では日本の大手メーカーのビールしか知りませんでした。高級店に行ってもコンビニに行っても買えるようなビールしか出てきません。」 これはフレンチの世界では考えられないことである。 「スーパーで1ユーロで買えるテーブルワインが、200~300ユーロもする星付きのフランス料理店に並ぶがわけないんですよ。」 山田さんが手がける“KAGUA” 「日本の食卓には日本の食卓にふさわしいビールがあるはず。グラスに注がれた瞬間から新鮮で独創性に満ちた上質な空間を作りたい。」 今でもまだスタートアップでグローバル市場を直接狙ってる人は少ない。 「だからこそぼくはその市場を取れると思っているし、本気で日本のビールを世界に広めたいと思っています。」
「それはまあ、当然だと思うんですよね。顕在化している市場に参入するには大資本がなければできないですから。」
「”Sustainable”っていうのが、これも当然ですね。何事も続かないと意味がない。しかし、日本のネット業界も見ていると、当時はあんまりその視点がなかった。日本ではとりあえずアメリカで流行ってるものやっとけ、みたいな。だから、”Sustainable”というのも新鮮でした。」
「今ではメルカリさんとかは、成功失敗を抜きにして世界の市場で勝負できないとダメなんだっていう意気込みでやられてますよね。これは当時だとすごい珍しくて、とにかく日本でこじんまりと儲かれば良い、英語化なんて一切考えてない、外国人を雇おうなんてありえない、というのが日本のスタンダードでした。」
インターネットが発達していなかった当時、先見の目を持ちGlobalという視点をMBAで身につけ挑戦の土台を整えた。
そうしていく中で、ビールが工業製品じゃないことを肌で思い始めた。「ビール×スタートアップ」この結びつきはなかったと語る山田さん。
「そういえば、クラスメイトにナイジェルというドイツ人の子がいたんですけど。僕がベルギーにいった翌週にみんなで飲んでて『ベルギーは良かった!ビールが美味しくて、ビールといえばやっぱベルギーだよね!』という話をすると、すごく怒り出して笑」
「ミュンヘンはミュンヘンでPUBごとに違うビールがあって、ベルギーとは違う意味で雰囲気も良くて。」
良い悪いではなく、場にふさわしいものを提供したいと考えるようになったのも、MBA在学中の観光がきっかけであったと語る。
「和の要素を扱っているレストランは世界中に増えていて、ビールの良さがわかる料理人が経営するレストランが増えているので、そこに訴求すればいけるんじゃないかと考えたのもきっかけでした。」
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